第一性の遡及的成立――最終統合監査後の論証体系の確定

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  1. I₀・J・P2a・P2からP5・P6・T3までの再構築
    1. はじめに――最終改稿に進むための五つの課題
  2. 1.従来のI₀に残されていた問題
  3. 2.I₀の再構成についての三つの方向性
    1. 方向A:I₀を原始的な個体化作用とする
    2. 方向B:Rᶜによる構成的閉包から個体化を説明する
    3. 方向C:物質的基体や時空間的境界から個体化を説明する
  4. 3.Rᶜによる構成的閉包の定式化
  5. 4.統合と境界形成は同じ構造形成過程によって成立する
  6. 5.I₀の最終定義
  7. 6.I₀の成立についての命題
  8. 1.Kだけでは数的個体性を説明できない
  9. 2.K・B・Πの役割
  10. 3.Jは個体性そのものなのか
  11. 4.αの意味を確定する
  12. 5.同じKを持つ二つの構造の数的差異
  13. 6.P2aの最終証明
  14. 1.構造全体が個体であることと、内部項が個体であることは異なる
  15. 2.個体化の三つの方向性
  16. 3.構造項の個体化条件
  17. 4.関係的識別可能性と弱い識別可能性
  18. 5.P2の最終定義と証明
  19. 6.IとCの循環問題
  20. 1.従来のP5・P6に残されていた問題
  21. 2.H1〜H6の役割
  22. 3.rとℓの区別
  23. 4.証拠条件E1・E2との関係
  24. 5.歴史的事例の再整理
    1. ユニヴァーシティ・カレッジの事例
    2. 生物学的系統の事例
    3. アルフレッド大王の創設者伝承
  25. 6.P5の最終定義
  26. 7.P6の最終定義
  27. 1.T1とT2の並置だけでは不十分である
  28. 2.B1:同一の構造個体を扱う条件
  29. 3.B2:歴史的前史から後続構造への構成的依存経路
  30. 4.B3:同一の構造的閉包への包含
  31. 5.Mι:歴史的前史と構造内部の個体化を接続する条件
  32. 6.B1・B2・B3・Mιの独立した役割
  33. 7.T3が成立しない反例
  34. 8.T3の最終証明
  35. 1.A1・A2の最終整理
  36. 2.第一論文の最終依存関係
  37. 3.第二論文の最終依存関係
  38. 4.T3の最終依存関係

I₀・J・P2a・P2からP5・P6・T3までの再構築

はじめに――最終改稿に進むための五つの課題

第一論文・第二論文の統合に向けて、これまで複数回にわたって論証体系の検証と修正を行ってきた。

前回までの検証によって、従来の問題点はかなり整理できた。しかし、二本の論文を統合したことによって、新しい依存関係も生じていた。

特に問題となったのは、次の五つである。

  1. I₀による基底的個体化と、J_D(S)・P2aによる構造全体の数的個体性の説明。
  2. J_D(S)を構成するK・B・Πの役割と、構成的解像度αの確定。
  3. P2aからP2への移行、およびIとCの循環問題。
  4. 第二論文におけるP5とP6の論理的な重複。
  5. T3を構成するB1・B2・B3・Mιの役割と、第一論文・第二論文の統合条件。

今回は、この五つを個別に検討するだけでなく、それぞれの解決案が他の論証と矛盾しないかを確認し、最終的な定義体系と証明の依存関係を確定することを目的とした。

今回の検討では、各問題について複数の方向性を比較した。

そのうえで、理論全体の一貫性を維持できるものを採用し、構造的個体化、歴史的前史、第一性の成立を一つの存在論的体系として再構築した。

本稿では、その検討過程と到達点を記録しておく。

第1章 I₀とP2a――構造全体の基底的個体化をどう説明するか

1.従来のI₀に残されていた問題

第一論文の出発点には、個体化根拠充足原理Gがある。

Gは、あるものが一つの個体として成立することを説明する理論に対して、少なくとも三つの根拠を要求する。

  • 数的統一:なぜ複数の差異的条件が一つの個体になるのか。
  • 数的差異:なぜその個体は他の個体と区別されるのか。
  • 個体的同一性:なぜ変化を経ても同じ個体として存続するのか。

従来の理論では、個体化された構造項を最初から措定しないために、前個体的差異場Δを導入していた。

そして、Δの内部にある差異的規定可能性が構成関係Rᶜによって組織化されることで、最初の構造S₀が成立すると考えていた。

これを表すのが、

I₀(Δ, Rᶜ → S₀)

である。

しかし、ここには一つの問題があった。

この式を置くだけでは、なぜΔの差異的規定可能性が一つの構造個体になるのかは説明されない。

つまり、個体化の成立をI₀という記号によって表現することと、個体化が成立する理由を説明することは別である。

前回の統合監査では、この点をP2aにも波及する問題として捉えた。

P2aは、構造全体の数的個体性を説明するために導入された命題である。

しかし、その前提として、すでに一つの統合された構造的閉包が成立していると置いてしまえば、構造が一つの個体になる理由を十分に説明したことにはならない。

この問題を解決するため、I₀そのものの成立条件から再検討した。

2.I₀の再構成についての三つの方向性

まず、解決方法を三つに分けて比較した。

方向A:I₀を原始的な個体化作用とする

この方向では、I₀そのものを説明不要の基礎的な作用として認める。

ΔとRᶜからS₀が成立することを、理論の基本原理として措定する方法である。

利点は、体系を簡潔に保てることだ。

しかし、Gが要求している個体性の説明をI₀という記号に置き換えているだけではないかという問題が残る。

I₀が何を条件として個体性を成立させるのかという説明がないため、今回の理論には不十分だと判断した。

方向B:Rᶜによる構成的閉包から個体化を説明する

こちらは、個体化以前の差異的条件と、その間に成立する構成的関係から、一つの構造的秩序が成立する条件を説明する方法である。

この方向なら、構造を形成するために、最初から個体化された複数の項を措定する必要がない。

個体化以前の差異的規定可能性そのものが、Rᶜによって構成的な秩序を形成する。

その秩序が一つの閉包を形成することで、最初の構造個体が成立する。

したがって、本理論の基本的な目的と最も整合する。

最終的に方向Bを採用した。

方向C:物質的基体や時空間的境界から個体化を説明する

物質的な位置や連続性によって、構造の数的個体性を説明する方法である。

物理的対象に対しては有効な場合がある。

しかし、制度、組織、数学的構造、生物学的系統など、時空間的な境界だけでは個体性を説明できない対象もある。

また、最初から境界づけられた物質的対象を前提にすることは、前個体的差異場から構造が成立するという本理論の目的から外れる。

そのため、一般原理としては採用しないことにした。

3.Rᶜによる構成的閉包の定式化

方向Bを採用したことで、Rᶜの役割をより厳密に定める必要が生じた。

ここで重要なのは、Rᶜを単なる関係一般として扱わないことである。

Rᶜは、個体化された二つの対象を後から結びつける外的関係ではない。

個体化以前の差異的規定可能性の間に成立する、実在的な構成的規定関係である。

そこで、Rᶜを次の条件によって限定する。

第一に、構成的規定性。

一方の差異的条件の規定が、他方の差異的条件の成立可能性や規定範囲に関与していること。

第二に、同一性関連性。

その関係が対象となる同一性水準Dにおける構造的秩序に関与していること。

第三に、非還元性。

その関係を単なる外的因果関係や偶然的な相関に置き換えた場合、構成的規定関係の内容が失われること。

第四に、個体化以前の成立。

その関係を認めるために、差異的契機をすでに独立した個体として措定する必要がないこと。

この四条件を満たすものをRᶜとして扱う。

次に、Δに内在する差異的契機を分析上識別する。

Δ = {δ₁, δ₂, ...}

ここでδᵢは個体化された構造項ではなく、前個体的差異場における差異的規定可能性を示す。

そして、対象となるDと構成的解像度αにおいて、差異的契機の間に成立する構成的関係を次のように表す。

Rᶜ_{D,α}(δᵢ, δⱼ)

この関係を通じて、ある差異的契機pから構成的に連結する差異的契機の全体を考える。

U_{D,α}(p) = [p]_{Rᶜ}

これはpを含む構成的連結成分である。

ただし、ここでいう連結は単なるグラフ上の連結ではない。

各関係が、先ほど定めたRᶜの四条件を満たしていなければならない。

このように限定することで、偶然接触しているだけの対象を一つの構造個体として扱うことを避けられる。

4.統合と境界形成は同じ構造形成過程によって成立する

ここで、今回の検討において重要だったのは、統合と境界形成を別々の作用として扱わないことだった。

Rᶜによる構成的連結が成立するとき、連結された領域は一つの秩序を形成する。

これが統合である。

一方、その連結が成立していない領域は、当該の構成的閉包には含まれない。

これが境界の成立である。

つまり、

構成的連結 → 統合

であると同時に、

構成的連結の限界 → 境界

でもある。

統合と境界形成は、別々の原因によって成立するのではない。

同一の構成的秩序の内的側面と外的側面として成立する。

この整理によって、構造全体の数的統一と、他の構造との差異を、同一の構成的生成過程から説明できる。

また、構成的連結成分の最大性によって、閉包の内部と外部が確定する。

固定されたDとαのもとで、ある差異的契機pを含む構成的連結成分は一意に定まる。

そのため、同じ構成的連結成分を互いに異なる二つの独立した構造個体として重複して個体化することはできない。

5.I₀の最終定義

以上を踏まえ、I₀を次のように再定義した。

D10b:基底的構造個体化

基底的構造個体化とは、前個体的差異場Δに内在する差異的規定可能性が、対象となる同一性水準Dおよび構成的解像度αにおいて、実在的な構成的関係Rᶜによる最大閉包を形成し、その閉包と境界が一つの構造的単位として成立することである。

基本表記は次のとおりである。

I₀(Δ, Rᶜ_{D,α} → S₀)

この定義によって、I₀は単なる個体化作用の名称ではなくなった。

その成立条件は、次の五つに整理できる。

  1. Δに差異的規定可能性があること。
  2. それらの間に実在的なRᶜが成立すること。
  3. Rᶜによる構成的連結成分が形成されること。
  4. その閉包が対象となる同一性水準Dにおいて非分解的であること。
  5. 閉包の内部と外部を区別する構成的境界が成立すること。

なお、ここでいう「最初」とは、宇宙に時間的に最初に存在したものを意味しない。

個体化された下位構造項を前提としない、存在論的・説明的な基底水準を意味する。

6.I₀の成立についての命題

命題I₀-T:基底的構造個体の成立

前個体的差異場Δにおいて、対象となる同一性水準Dおよび構成的解像度αに関して、実在的な構成的関係Rᶜが成立しているとする。

その構成的連結成分Uが非空であり、構成的連結の最大性と非分解性を満たすならば、Uは一つの構造個体S₀として成立する。

証明

UはRᶜによる構成的連結成分であるため、その内部の差異的契機は一つの構成的秩序を共有している。

また、Uは最大の構成的連結成分であるため、Uに構成的に連結する外部の差異的契機は存在しない。

さらに、Uを二つに分割すると、その内部を結ぶ構成的関係が切断され、元の構成的制約秩序が維持できなくなる。

したがって、Uは単なる差異的契機の集合ではなく、一つの統合された構成的単位である。

また、Uの内外は構成的関係の成立範囲によって区別されるため、その境界は構造形成過程自体に内在する。

複数の構成的連結成分が存在する場合、それぞれは互いに交わらない。

したがって、構造的に区別される複数性も説明できる。

以上から、Uは一つの構造個体S₀として成立する。□

ここで確定したのは、I₀の論理的な成立条件である。

Rᶜの具体的な実在的成立は、A2bおよび対象事例について別途確認されるべき基礎条件として明示する。

Δが存在するというだけで、あらゆる差異的場から必然的に構造個体が生まれるとは主張しない。

第2章 J_D(S)とα――数的個体性の説明を完成させる

1.Kだけでは数的個体性を説明できない

次に、構造全体の数的個体性を説明するために導入したJの役割を再検討した。

従来のK_D(S)は、構造的同一性を維持する構成的制約を表していた。

しかし、二つの構造が同じKを持っていても、それだけで数的に同一になるわけではない。

例えば、同じ目的、同じ規則、同じ権限配分を持つ二つの組織が存在していても、その組織は別個の存在者でありうる。

したがって、Kだけでは具体的な数的個体性を説明できない。

そこで導入されたのが、

J_D(S) = <K_D(S), B_D^α(S), Π_D(S)>

である。

今回の検討では、この三要素の役割をさらに厳密に確定した。

2.K・B・Πの役割

Kは、構造的同一性を維持する構成的制約の不変項である。

Bは、その同一性条件を具体的に実現する構成的ネットワーク・閉包である。

Πは、その構造的実現がΔ内部において占める配置、境界、周囲との構成的な位置関係である。

要素説明する内容
K何が維持されれば同じ構造的同一性が成立するのか
Bその同一性が何によって具体的に実現されるのか
Πその実現がどの範囲・境界・位置を占めるのか

この三要素は、互いに補完するが、同じ役割を繰り返しているわけではない。

Kだけでは具体的実現が分からない。

Bだけでは、どのような不変項が実現されているのかが分からない。

Πだけでは、なぜその位置にある領域が一つの構造を形成するのかが分からない。

したがって、三要素を維持することにした。

3.Jは個体性そのものなのか

ここでは、二つの方向性を比較した。

方向Aは、JそのものをK・B・Πとは別の実在的構成要素とする方法である。

しかし、この場合、個体性を成立させるためにJという新たな存在者を導入することになり、そのJ自身の個体性を説明する問題が再発する。

方向Bは、Jを実在的な構成条件の統合的プロフィールとする方法である。

この場合、Jそのものは独立した実体ではない。

K・B・Πという実在する構成条件を、一つの形式的プロフィールとして表現する。

最終的に方向Bを採用した。

したがって、Jは第四の構成要素ではない。

Jは、個体性を構成する条件を統合的に表現するものであり、実在的な条件はK・B・Πそのものである。

4.αの意味を確定する

今回の統合監査で、新たに明確になった問題がαである。

従来の記法ではBにαが付されていた。

しかし、αが何を意味するのかが曖昧なままだと、複数の閉包候補が存在する場合にJの一意性が不安定になる。

そこで、三つの方向性を比較した。

方向A:αを任意の分析水準とする。

分析者が自由にαを選択できるようにする方法である。

しかし、これでは分析者の恣意性によって個体性が変わってしまう可能性がある。

採用しない。

方向B:αをDと同一視して廃止する。

記法は簡潔になるが、同一性水準と構成的解像度は必ずしも同じではない。

同一の制度的対象でも、どの範囲の構成的秩序を分析するかは異なりうる。

採用しない。

方向C:αを事前に確定される構成的解像度とする。

Dは何の同一性を問うのかを定め、αはその同一性を分析するときの構成的解像度を定める。

αは履歴を判定する前に、対象の種類と同一性条件に基づいて確定する。

この方法ならば、分析者の恣意性と、歴史的前史からの逆算を防ぐことができる。

方向Cを採用する。

これに伴い、Jの最終表記は次のとおりとする。

J_{D,α}(S) = <K_D(S), B_D^α(S), Π_D^α(S)>

従来のJ_D(S)は、αが固定されている場合の省略表記とする。

5.同じKを持つ二つの構造の数的差異

二つの構造S₁とS₂について、

K_D(S₁) = K_D(S₂)

が成立していても、

B_D^α(S₁) ≠ B_D^α(S₂)

または、

Π_D^α(S₁) ≠ Π_D^α(S₂)

であれば、

J_{D,α}(S₁) ≠ J_{D,α}(S₂)

となる。

この場合、両者は同じ構造的不変項を持ちながら、具体的な構成的実現や配置・境界の差異によって別個の構造個体として成立する。

一方、K・B・Πだけでなく、それらを成立させる非自明な関係的位置まで完全に識別不能である場合には、構造的に区別される二つの個体を無条件に措定しない。

これは、数的差異を数的差異そのものによって説明することを避けるためである。

したがって、本理論の個体化原理は、構造的に識別可能な数的個体性に射程を限定する。

構造的に完全に識別不能な複数性を、説明なしに認める立場は採用しない。

6.P2aの最終証明

以上を踏まえ、P2aを再定式化した。

命題P2a:構造全体の数的個体化

前個体的差異場Δにおいて、Dとαを固定した実在的構成関係Rᶜが成立し、その関係による最大構成的閉包Uが存在するとする。

Uが統合性、非分解性、構成的境界、具体的配置、他構造との非自明な差異を備える場合、Uは一つの構造個体Sとして成立する。

証明

I₀-Tによって、Uは一つの構造個体として成立する。

Uの構成的秩序をK_D(S)、具体的な構成的実現をB_D^α(S)、境界と配置をΠ_D^α(S)として表す。

このとき、

J_{D,α}(S) = <K_D(S), B_D^α(S), Π_D^α(S)>

が成立する。

Uの構成的連結性と非分解性によって数的統一が説明される。

異なる閉包が存在する場合には、その構成的実現と配置・境界によって数的差異が説明される。

また、Kの維持と構造的実現の連続性によって個体的同一性が説明される。

以上から、Gが要求する数的統一・数的差異・個体的同一性を、構成的な条件によって説明できる。

ゆえに、P2aが成立する。□

この再構成によって、P2aは単なる構造的閉包の存在を前提とする命題ではなく、Rᶜから成立した閉包が一つの構造個体となる条件を示す命題になった。

第3章 P2aからP2へ――構造内部の個体化とI・Cの関係

1.構造全体が個体であることと、内部項が個体であることは異なる

P2aによって、構造全体Sが一つの個体として成立することを説明できた。

しかし、それによって内部にあるすべての差異的契機が、独立した構造項として個体化されるわけではない。

ある差異は、一時的な状態にすぎないかもしれない。

ある差異は、構造全体の変化に伴って生じる偶然的な違いかもしれない。

別の差異は、独立した制度的役割や構造項として成立しているかもしれない。

したがって、構造への所属と個体化を区別する必要がある。

2.個体化の三つの方向性

ここでは次の三つを比較した。

方向A:すべての内部差異を個体化する。

これは、構造内部にあるすべての差異的契機を構造項として認める方法である。

しかし、単なる状態や性質と、独立した構造項とを区別できなくなるため採用しない。

方向B:構成的位置と関係的識別可能性によって個体化する。

ある差異的契機が構造内において固有の構成的役割を持ち、他の契機から識別可能である場合に個体化する。

これは、個体を構造以前に措定せずに個体性を説明する方向である。

採用する。

方向C:独立した内在的性質を個体化の根拠とする。

しかし、この方法では構造に先立つ個体を認める方向に戻ってしまう。

本理論の基本的立場とは整合しない。

3.構造項の個体化条件

ある差異的契機mᵢが構造Sの内部で占める構成的プロフィールを、次のように表す。

ρ_{D,α}(mᵢ|S)

これは、mᵢが構造内部で持つ構成的役割の全体を示す。

そのプロフィールについて、次の四条件を要求する。

I-1:構成的役割の確定

mᵢが構造Sにおいて特定の構成的役割を担っていること。

I-2:関係的識別可能性

対象となるDとαにおいて、mᵢが他の候補となる契機から区別されること。

I-3:同一性条件の成立

mᵢが構造項として持つ同一性条件を特定できること。

I-4:構成的安定性

その契機が一時的な状態の差異ではなく、対象となる同一性水準において固有の構成的位置を維持していること。

この四条件を満たす場合、mᵢは独立した構造項xᵢとして個体化される。

4.関係的識別可能性と弱い識別可能性

ここで重要なのは、個体化の根拠を内在的性質だけに限定しないことである。

例えば、二つの差異的契機m₁とm₂が、同じ内在的性質を持っているとする。

しかし、その間に非反射的な構成的関係が成立している場合、両者は関係によって識別できる可能性がある。

R(x₁,x₂)

かつ、

¬R(x₁,x₁)

ならば、x₁とx₂が同一であると仮定すると、非反射的なRの条件に反する。

したがって、

x₁ ≠ x₂

が導かれる。

これによって、内在的性質の違いがなくても、構造的関係によって個体化される場合を説明できる。

ただし、構成的関係によっても区別できないものについて、無条件に数的複数性を措定することは認めない。

5.P2の最終定義と証明

命題P2:構造内部の差異的契機の個体化

構造SがP2aによって一つの構造個体として成立し、その内部に差異的契機mᵢが存在するとする。

mᵢがI-1〜I-4を満たす場合、個体化関係Iによって、mᵢは構造項xᵢとして成立する。

I(S, mᵢ → xᵢ)

証明

P2aによって、Sは一つの構造個体として成立している。

mᵢはSの内部において特定の構成的役割を担い、他の差異的契機と区別される。

さらに、その役割は対象となる同一性水準で独立した同一性条件を持ち、構成的位置にも一定の安定性がある。

したがって、mᵢは単なる状態や性質の差異ではなく、一つの構造項として成立する。

ゆえに、

I(S, mᵢ → xᵢ)

が成立する。□

これによってP2aとP2の役割が明確になった。

P2aは構造全体の個体性を説明する。

P2は構造内部の個体化可能な契機を個別の構造項として説明する。

この二つを同一視しないことが重要である。

6.IとCの循環問題

ここで、IとCの関係も整理した。

従来の問題は、構造が内部項を個体化する一方で、構造そのものも個体化された下位項によって具体的に実現されるという相互依存にあった。

この関係は、同一水準で使用すると、次のような説明上の循環を生む可能性がある。

S → xᵢ → S

しかし、今回の検討では、それぞれの入力と出力を異なる水準に配置することで解決する方向を採用した。

関係入力出力
I₀ΔとRᶜ基底構造S₀
I成立した構造Sと内部契機mᵢ構造項xᵢ
C個体化された下位構造項上位構造S⁺

したがって、

I₀(Δ, Rᶜ → S₀)

によって基底構造が成立し、

I(S₀, mᵢ → xᵢ)

によって内部項が個体化され、

C({xᵢ}, Rᶜ → S₁)

によって上位構造が具体的に実現される。

この順序では、IとCが同じ対象を同じ水準で相互に前提とすることはない。

実在的な相互規定は認めつつ、説明上の循環は避けられる。

以上から、第一論文の個体化論証は、次の順序に確定した。

Δ + Rᶜ → I₀ → S₀ → J_{D,α}(S₀) → P2a → I(S₀, mᵢ → xᵢ) → P2 → C → S₁

第4章 P5とP6――歴史的前史の選別と実際の包含を分離する

1.従来のP5・P6に残されていた問題

第二論文では、過去の履歴が後続構造の構成的前史となるための条件を、H1〜H6によって整理している。

そのうえで、P5では歴史的前史の資格を判定し、P6ではその履歴が後続構造の構成的閉包Bに含まれることを示していた。

しかし、P5の条件のなかに、Bへの実際の包含に関係する内容が含まれていたため、P5とP6の役割が重複する可能性があった。

そこで、二つの方向性を比較した。

方向Aは、P5で包含関係まで証明し、P6を形式的な再記述にする方法である。

しかし、P6の独立した意味がなくなるため採用しない。

方向Bは、P5を履歴の選別・資格判定に限定し、P6を実際の構成的包含の証明とする方法である。

方向Bを採用した。

2.H1〜H6の役割

各条件の役割は次のとおりである。

条件判定する問題
H1履歴の実在性と時間的先行性
H2実際の構成的寄与
H3履歴と後続構造の追跡可能な連結
H4構成的寄与とK_D(S)との関係
H5個々の出来事の代替可能性と構成的役割の必要性
H6歴史的連続・系譜・生成経路そのものの不可還元性

ここで重要なのは、H6がH1〜H5と単純に同じ水準の条件ではないということだ。

H1〜H5は、過去の履歴と後続構造の間に成立する構成的寄与を判定する。

H6は、その歴史的経路自体が後続構造の同一性条件に含まれるかどうかを判定する。

したがって、H6はすべての歴史的前史に要求される一般条件ではない。

歴史的経路そのものが同一性を構成する場合に要求される強化条件である。

3.rとℓの区別

ここで、歴史的な構成的寄与rと、歴史的連続関係ℓを区別する。

例えば、過去の出来事hによって、後続構造の財産や制度的規則が成立したとする。

この場合、hが実現した構成的寄与はrとして表される。

ι(hᵢ) = rᵢ

一方、後続構造の同一性が、現在の状態だけでなく、実際の系譜・生成経路にも依存する場合、その経路そのものをℓとして表す。

ι(hᵢ) = ℓᵢ

そして、強い意味での歴史的資格Qが成立するためには、

ℓᵢ ∈ B_D^α(S)

が必要となる。

つまり、過去の出来事が現在の条件を成立させたことと、過去から現在に至る歴史的経路自体が同一性を構成することは異なる。

この区別によって、因果的起源・歴史的アンカリングと、歴史的経路の構成的不可還元性を区別できるようになった。

4.証拠条件E1・E2との関係

さらに、存在論的な歴史的資格と、歴史的資格を認定するための証拠条件を区別した。

これは非常に重要である。

ある歴史的関係が実際に存在していたことと、その関係を現在の史料によって十分に立証できることは同じではない。

そこで、

Q^O(H,S)

を存在論的な歴史的資格の成立とし、

W(Q^O)

をその資格に対する証拠的正当化とする。

E1・E2は、後者に関係する条件である。

この区別によって、史料が残っていないことから、過去の構成的関係自体が存在しなかったと結論する誤りを避けられる。

ただし、史料が不足している場合には、その歴史的資格を認定することができないという認識上の制約は残る。

5.歴史的事例の再整理

今回の検討では、従来使用してきた組織事例の位置づけも見直した。

ユニヴァーシティ・カレッジの事例

ウィリアム・オブ・ダラムの1249年の遺贈から、財産の管理、遺言執行者による履行要求、制度化に至る履歴を検討してきた。

この事例は、過去の出来事が後続する制度的構造にどのような構成的寄与を与えるかを分析するうえで有用である。

しかし、現在の構造的同一性が、過去の出来事の歴史的経路そのものに不可還元的に依存しているかどうかは、別途証明する必要がある。

もし現在の規則や財産基盤だけで対象となる制度的同一性を十分に説明できるならば、過去の出来事は構成的寄与を設定したアンカーとして説明できる可能性がある。

したがって、この事例は強い意味でのQの確定例とするよりも、広い意味での歴史的寄与資格Q_cの候補として位置づけることにした。

また、対象構造Sと同一性水準Dを、歴史的起源を先に組み込まず独立に確定し、その後にK・Bを定め、最後に履歴を検証する順序を採用する。

生物学的系統の事例

一方、H6の必要性を示す候補としては、生物学的系統の方が適切である。

現在の形態や機能が類似していても、実際の祖先・子孫関係や分岐の履歴が異なれば、同じ系統とは言えない場合がある。

ここでは、現在の状態だけではなく、実際の進化経路そのものが対象の同一性を構成する。

したがって、歴史的連続関係ℓがBに含まれる事例となりうる。

ただし、種や系統の概念には複数の理論的立場があるため、対象となる分類水準Dを固定して論証する必要がある。

アルフレッド大王の創設者伝承

アルフレッド大王の創設者伝承は、否定例としてだけでなく、対象相対的な歴史的資格を示す対照例として位置づける。

元の組織の成立史については、872年の創設を裏づける証拠が確認できない。

しかし、後世の創設者伝承という記憶構造に対しては、その伝承形成の過程自体が構成的前史になる可能性がある。

つまり、同じ歴史的記述でも、対象構造Sが異なれば資格は異なる。

これによって、歴史的前史の資格が、起源物語をそのまま承認する仕組みではないことを示せる。

6.P5の最終定義

P5は次のように整理した。

命題P5:歴史的前史の構成的資格判定

対象となる構造S、同一性水準D、構成的解像度α、およびK_D(S)が独立に確定されているとする。

過去の履歴H_(t₀)がH1〜H5を満たし、さらに歴史的経路そのものが同一性条件に関与する場合にはH6を満たすとする。

このとき、その履歴は構成的前史の候補として選別される。

E1・E2は、その資格を認定するための証拠的正当化を与える。

ただし、P5では、履歴が実際に構造的閉包Bに含まれることまでは証明しない。

P5は、履歴を選別し、構成的寄与rまたは歴史的連続関係ℓを特定する段階である。

7.P6の最終定義

P6では、P5で選別された歴史的前史が、実際に構造的閉包Bに含まれることを証明する。

そのため、履歴対応写像ιを導入する。

ι: H_{S,D}(t₀) → B_D^α(S)

この写像は、単なる過去の出来事と現在の状態の対応ではない。

構成的依存関係を保存する対応である。

したがって、次の包含関係が必要になる。

ι[H_{S,D}(t₀)] ⊆ B_D^α(S)

命題P6:歴史的前史の構成的閉包への包含

P5によって選別された歴史的前史Hについて、履歴対応写像ιが実際の構成的寄与または歴史的連続関係を構造的基盤Bに対応づけ、構成的ネットワークを保存する場合、HはBに包含される。

このとき、P5とP6の役割が明確に分かれる。

  • P5:履歴の選別と構成的資格の判定。
  • P6:選別された履歴の実際の包含の証明。

BはK・D・α・Rᶜの判定基準によって履歴判定より先に確定される。

したがって、履歴を包含するためにBを後から変更するという循環も回避できる。

第5章 T3の統合条件――B1・B2・B3・Mιの最終定式化

1.T1とT2の並置だけでは不十分である

第一論文のT1は、構造内部における個体化と第一性を説明する。

第二論文のT2は、構造に先行する歴史的前史の構成的資格を説明する。

しかし、二つの定理がそれぞれ成立しても、それだけでT3が成立するわけではない。

例えば、T1とT2が異なる構造や異なる同一性水準を対象としている場合がある。

また、歴史的前史が単なる因果的起源にすぎない場合もある。

さらに、歴史的前史は構造の閉包に含まれていても、第一論文の個体化や第一性とは何の関係もない場合がある。

したがって、両者を接続する追加条件が必要である。

2.B1:同一の構造個体を扱う条件

B1では、第一論文と第二論文の対象が一致していることを要求する。

そのため、次の条件を一致させる。

  1. 構造S。
  2. 同一性水準D。
  3. 構成的解像度α。
  4. 構造的不変項K_D(S)。
  5. 構成的閉包B_D^α(S)。
  6. 構成的配置Π_D^α(S)。
  7. 構成的依存関係の判定基準d。

つまり、次の関係が必要になる。

J_{D,α}^{(1)}(S) = J_{D,α}^{(2)}(S)

B1は両論文が同一の構成的基盤を使用することを保証する。

ただし、B1そのものが数的同一性を証明するわけではない。

あくまで、すでに独立に確定された同一対象について両論文が論じていることを保証する条件である。

3.B2:歴史的前史から後続構造への構成的依存経路

B2は、過去の履歴から後続構造へ至る構成的依存経路が存在することを要求する。

H(t₀) →_c S(t₁)

ここで重要なのは、単なる時間的先行や因果的影響ではないということだ。

必要なのは、歴史的前史が、どのような構成的関係を通して後続構造に関与するかを示すことである。

B2によって、歴史的前史と後続構造が実際の構成的経路によって接続される。

4.B3:同一の構造的閉包への包含

B3では、第二論文のP6で証明された歴史的包含先が、第一論文で使用されるBと同一であることを要求する。

P6は包含関係を証明する。

B3は、その包含先が第一論文と第二論文で共通であることを確認する。

したがって、P6とB3は異なる役割を持つ。

  • P6:歴史的前史がBに含まれていること。
  • B3:そのBが両論文で同一であること。

5.Mι:歴史的前史と構造内部の個体化を接続する条件

今回の統合監査で、最も重要だったのはMιの形式化である。

単に歴史的前史がBに含まれているだけでは、第一論文の個体化と接続されたことにはならない。

また、第一論文でODの非対称性が成立しているだけでも、歴史的前史がその秩序と関係していることにはならない。

そこで、Mιに四つの条件を設けた。

M1:対応の実在性

歴史的前史の諸契機と、Bの内部にある構成的寄与との間に、実際の対応関係ιが成立していること。

M2:関係保存

歴史的前史の構成的依存関係が、ιによってBの内部に対応づけられるとき、その依存の方向と構成的役割が保存されていること。

M3:個体化との接続

ιによって対応づけられた構成的寄与が、第一論文の個体化関係Iによって成立する構造項の同一性条件と関係していること。

M4:第一性との接続

その構成的寄与が、T1で第一性を判定したA・Bの構成的依存関係を実現するネットワークに接続されていること。

これによって、歴史的前史が単に同一の構造に属しているというだけでなく、第一性を成立させる構成的秩序と関係づけられる。

Mιは必ずしも一対一対応や全単射を要求するものではない。

複数の過去の出来事が一つの構成的寄与を実現することもありうるからである。

重要なのは、構成的依存関係の方向と役割が適切に対応づけられていることだ。

6.B1・B2・B3・Mιの独立した役割

条件保証する内容
B1同一の構造個体・同一のJを扱う
B2歴史的前史から後続構造への構成的依存経路
B3同一の構造的閉包Bへの実際の包含
Mι歴史的前史と内部個体化・第一性の構成的対応

これらは、それぞれ異なる問題を排除している。

特にMιは、T3がT1とT2の単なる並置ではないことを保証する重要な条件である。

7.T3が成立しない反例

B1〜B3とMιが必要であることを確認するため、反例も再整理した。

反例A:対象構造が異なる場合

T1はS₁、T2はS₂について成立している。

この場合、B1が成立しない。

反例B:歴史的前史が単なる因果的起源の場合

過去の出来事が後続構造に影響したとしても、その関係が構成的依存ではない場合、B2が成立しない。

反例C:包含先が異なる場合

第二論文で使用されるB’と第一論文で使用されるBが異なる場合、B3が成立しない。

反例D:歴史的前史が内部個体化に接続していない場合

歴史的前史がBに含まれていても、第一論文のIやODの非対称性と何の関係もない場合、Mιが成立しない。

このように、T1とT2がそれぞれ成立しても、T3が成立しない場合を具体的に構成できる。

したがって、T3の追加条件は単なる形式的な付加ではなく、統一定理としての独自の意味を持っている。

8.T3の最終証明

統一定理T3:第一性の遡及的成立

T1およびT2が成立し、B1・B2・B3・Mιが満たされ、D・α・dが整合している場合、構造内部の個体化と第一性、および構造に先行する歴史的前史は、同一の構成的依存秩序において統合される。

基本形式は次のとおりである。

T1 + T2 + B1 + B2 + B3 + Mι + D・α・dの整合 → T3

証明

T1によって、構造S内部における個体化と第一性が成立している。

T2によって、歴史的前史Hが構造Sの構成的前史として資格を持ち、その対応先がBに含まれている。

B1によって、両論文は同一の構造個体、同一のD・α・d、および同一のJを使用している。

B2によって、歴史的前史から構造Sへの構成的依存経路が成立している。

B3によって、歴史的前史の包含先Bが、第一論文と第二論文で同一であることが保証される。

さらに、Mιによって、歴史的前史の構成的契機が、第一論文の個体化関係IおよびODの非対称性を成立させる同一の構成的依存ネットワークに接続される。

したがって、歴史的前史と構造内部の第一性は、単に別々に成立しているのではなく、同一の構成的依存秩序の異なる局面として統合される。

ゆえに、統一定理T3が成立する。□

第6章 最終的な公理体系と論証依存関係

1.A1・A2の最終整理

今回の検証では、ΔからS₀への移行に関して、構成的関係の可能性と実際の成立を区別した。

そのため、A1・A2は次のように整理する。

A1:前個体的差異場

Δは、すでに個体化された複数の存在者の集合ではなく、差異的規定可能性が成立する前個体的な場である。

A2a:構成的関係の可能性

Δに内在する差異的規定可能性は、個体化された項を前提とすることなく、構成的関係Rᶜに組み込まれうる。

A2b:構成的関係の実在的成立

特定のD・αにおいて、Rᶜが実際に成立している場合がある。

この区別によって、構造形成の可能性と実際の構造形成を混同しなくなる。

A1 + A2a

だけで、あらゆるΔから必ず構造個体が生じるとは主張しない。

A1 + A2a + A2b + 構成的閉包条件

を満たす場合に、I₀による構造個体の成立が導かれる。

2.第一論文の最終依存関係

第一論文の論証体系は次の順序に確定する。

A1 + A2a + A2b → Rᶜ → I₀ → S₀

S₀ → J_{D,α}(S₀) → P2a

P2a + I-1〜I-4 → I(S₀, mᵢ → xᵢ) → P2

P2 + ODの実在的判定 → P3 → T1

この順序によって、構造全体の個体性と内部項の個体化、さらに第一性の成立を区別して説明できる。

3.第二論文の最終依存関係

第二論文は次の順序に確定する。

A3 → P4

P4 + H1〜H6 + E1・E2 → P5

P5 + ι + Bの独立確定 → P6

P6 + 通時的構成的依存条件 → T2

P5は履歴の選別、P6は実際の構成的包含である。

また、H6はあらゆる歴史的寄与に必要なのではなく、歴史的経路そのものが同一性条件に含まれる場合に必要な強化条件である。

4.T3の最終依存関係

T1 + T2 + B1 + B2 + B3 + Mι + D・α・dの整合 → T3

T3は、第一論文の構造的個体化と第二論文の歴史的前史を、同一の構成的依存秩序に統合する。

これによって、二本の論文の相互関係も明確になった。

第7章 今回の五つの課題についての最終判定

課題最終的な解決
① I₀とP2aRᶜの最大構成的閉包によって構造全体の個体化を説明する
② JとαJを実在的条件の統合的プロフィールとし、αを事前確定された構成的解像度とする
③ P2aからP2構成的位置・関係的識別可能性・同一性条件・構成的安定性によって内部項を個体化する
④ P5とP6履歴の資格判定と構造的閉包への実際の包含を分離する
⑤ B1・B2・B3・Mι同一の構成的基盤、歴史的依存経路、包含、関係保存によってT1とT2を統合する

今回の検証によって、これら五つの課題に対する採用方針と論証形式を確定することができた。

ただし、ここでいう「解決」は、概念体系と論証上の依存関係が確定したという意味である。

A2bの具体的な実在的成立、実際のODの適用、個々の対象におけるK・B・Πの確定、歴史的前史に関する証拠の十分性まで、すべて演繹的に証明されたという意味ではない。

特に、最終改稿では、条件付き命題を無条件の定理として記述しないことが重要になる。

本理論の主張を強く見せるために未実証の前提を隠すのではなく、どの条件のもとで何が導かれるのかを明示することが、論証の信頼性につながると考える。

おわりに――第一論文・第二論文の最終改稿へ

今回の検証によって、第一論文・第二論文を統合するために残されていた五つの論理的課題について、採用する存在論的立場、定義、命題、証明の依存関係を整理することができた。

特に重要だったのは、I₀による構造全体の個体化を、単に個体化の原理として措定するのではなく、前個体的差異場における構成的閉包の成立から説明する方向を採用したことである。

この修正によって、構造全体の数的統一と境界形成を同一の構造形成過程のなかで説明できるようになった。

また、J_D(S)については、K・B・Πをそれぞれ異なる役割を持つ構成的条件として整理し、J自体はそれらを統合する形式的プロフィールとして位置づけた。

さらに、αの意味を構成的解像度として明確化することで、第一論文と第二論文における閉包の扱いを統一した。

P2aとP2についても、構造全体の個体性と内部項の個体化を別の論証段階として確定することができた。

第二論文では、P5とP6の役割を分離し、歴史的前史の資格判定と構成的閉包への実際の包含を区別した。

そして、B1・B2・B3・Mιによって、第一論文のT1と第二論文のT2を統一する条件を整理した。

特にMιは、歴史的前史が単に同じ構造に含まれるというだけではなく、構造内部の個体化と第一性を成立させる構成的依存秩序に接続されることを要求する。

これによって、T3を単なるT1とT2の並置ではなく、両者の構成的な統合として位置づけることができた。

今回の作業で、私は改めて次の点を確認した。

「第一性の遡及的成立」は、単にあるものが他のものより先に存在していたという時間的な優先関係を説明する理論ではない。

ある構造の内部において、何が構成的に第一であるかを説明すると同時に、その構造自体がどのような構成的秩序によって個体として成立しているのかを問い直す理論である。

さらに、その構成的秩序が、過去のどのような歴史的前史によって成立しているのかを説明しようとする。

したがって、本理論において第一性は、構造から独立した絶対的な出発点ではない。

構造内部の依存関係によって成立する一方、その構造自体も、前個体的差異と歴史的な構成的過程から切り離された無条件の存在者ではない。

このような構造的個体化、内部的な第一性、歴史的前史の三つを、一つの構成的存在論として統合することが、今回の最終的な到達点である。

ここまでの検証を受けて、次の段階では第一論文・第二論文の最終改稿に進む。

これまで統一してきた定義・記号・命題を不用意に最初から変更するのではなく、今回確定した論証体系を基準として、それぞれの論文の冒頭から結論までを再構成する。

その際には、証明されていること、条件付きで成立すること、個別事例による実証を必要とすることを明確に区別する。

また、数式はすべてプレーンテキストのコード表記に統一する。

今回の検証は、これまで積み重ねてきた問題点の個別修正を、一つの論証体系としてまとめる作業だった。

ここからは、その体系を第一論文・第二論文という二つの独立した学術論文のかたちに仕上げていく。

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