ラテン語で読むスピノザ『エチカ』第一部 定理一六〜定理一七

スピノザ
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第一部 定理一六

原文

Ex necessitate divinæ naturæ infinita infinitis modis (hoc est omnia quæ sub intellectum infinitum cadere possunt) sequi debent.

自訳

神の〔本性の〕必然性から|無限に多くのものが無限な仕方で|(すなわち|全てが|〈どんな全て?〉無限な知性のもとに落ちてきうる)|出てこなければならない。

証明 原文

DEMONSTRATIO: Hæc propositio unicuique manifesta esse debet si modo ad hoc attendat quod ex data cujuscunque rei definitione plures proprietates intellectus concludit, quæ revera ex eadem (hoc est ipsa rei essentia) necessario sequuntur et eo plures quo plus realitatis rei definitio exprimit hoc est quo plus realitatis rei definitæ essentia involvit. Cum autem natura divina infinita absolute attributa habeat (per definitionem 6) quorum etiam unumquodque infinitam essentiam in suo genere exprimit, ex ejusdem ergo necessitate infinita infinitis modis (hoc est omnia quæ sub intellectum infinitum cadere possunt) necessario sequi debent. Q.E.D.

証明 自訳

この定理は|だれにも明白なはずである|これ〔hoc〕に注目するだけで|〔これとはなに?〕どんな事物について与えられた定義からでも|より多くの諸特性〔proprietates〕を|知性が|結論する〔ということ〕〔←ここまでがhocにかかる関係代名詞節〕|〔ここからがproprietatesにかかる関係代名詞節→〕実は同じもの〔=definitione〕(すなわちその事物自身の本質)から|必然的に出てきた〔諸特性を〕〔proprietatesにかかる関係代名詞節終わり〕|そしてますます〔諸特性の数は〕多い|事物の定義が事象性をより多く表現すればするほど|すなわち、定義された事物の本質がより多くの事象性を含めば含むほど〔それだけ多い〕。|ところが神的本性は|絶対的に無限な属性を持ち(定義六により)|しかもそれら〔属性〕一つひとつもまたその種類において無限な本質を表現するのだから〔文頭のcum:理由文〕|それゆえに〔ergo:根拠(帰結)〕同じもの〔神の本性〕の必然性から|無限に多くのものが無限な仕方で|(すなわち|全てが|〈どんな全て?〉無限な知性のもとに落ちてきうる)|必然的に出てこなければならない。|これが証明されるべきことであった。

第一部 定理一六 系一

原文

COROLLARIUM I : Hinc sequitur Deum omnium rerum quæ sub intellectum infinitum cadere possunt, esse causam efficientem.

自訳

ここから出てくるのは|神が|すべての事物の|〔どんな事物?〕無限な知性のもとに落ちてきうる〔すべての事物の〕|作用因であるということ。

第一部 定理一六 系二

原文

COROLLARIUM II : Sequitur II. Deum causam esse per se, non vero per accidens.

自訳

第二に出てくるのは|神の原因はそれ自身によるものであり、|偶然によるものではまったくないということ。

第一部 定理一六 系三

原文

COROLLARIUM III : Sequitur III. Deum esse absolute causam primam.

自訳

第三に出てくるのは|神は絶対的に第一原因であること。

第一部 定理一七

原文

Deus ex solis suæ naturæ legibus et a nemine coactus agit.

自訳

神は|自らの本性の諸法則のみによって|かつ誰にも強制されることなく|作用する。

証明 原文

DEMONSTRATIO: Ex sola divinæ naturæ necessitate vel (quod idem est) ex solis ejusdem naturæ legibus infinita absolute sequi modo propositione 16 ostendimus et propositione 15 demonstravimus nihil sine Deo esse nec concipi posse sed omnia in Deo esse; quare nihil extra ipsum esse potest a quo ad agendum determinetur vel cogatur atque adeo Deus ex solis suæ naturæ legibus et a nemine coactus agit. Q.E.D.

証明 自訳

神的本性の必然性のみから|あるいは(それは同じことであるが)|同じ〔神的〕本性の諸法則のみから、|無限に多くのもの〔infinita:形容詞の名詞的用法〕が絶対的にでてくる|ちょうど定理十六で我々が示したように。|そして我々は定理十五で証明した|〔何を?〕神なしでは何も在りえず|考えられることもできず|しかもそのうえ〔sed:付加〕一切は神の中に在る〔ということを〕。|それゆえ〔quare:根拠(帰結)〕|同じもの〔神〕の外には何も在りえず|〔神が〕それによって【1】活動へと【2】決定され|あるいは強制される〔ものは何も在り得ない〕【3】|そのうえ〔atque:付加〕|まさしく神は自らの本性の諸法則のみによって|かつ誰にも強制されることなく|作用する。|これが証明されるべきことであった。

語釈

【1】a quo は関係代名詞で先行詞はnihil。ここでの「それ」とは「神自身の外に在るもの」
【2】ad agendum 動名詞の対格形は常に前置詞と一緒に使う。adとともに副詞句を作る。「〜することへ」「〜するために」(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p179 動名詞の対格)
【3】determinetur、cogaturは関係文での接続法。「〜のような」(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p279 傾向・結果を表す関係文)

第一部 定理一七 系一

原文

COROLLARIUM I: Hinc sequitur I. nullam dari causam quæ Deum extrinsece vel intrinsece præter ipsius naturæ perfectionem incitet ad agendum.

自訳

ここからの帰結として第一に|原因は何も与えられない|〔どんな原因?〕神を内または外から|それ自身の〔ipsius:神的〕本性の完全性のほかに|活動へと〔ad agendum〕【1】駆り立てる〔原因は何も与えられない〕。

語釈

【1】前節と同じ用法。ad agendum 動名詞の対格形は常に前置詞と一緒に使う。adとともに副詞句を作る。「〜することへ」「〜するために」(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p179 動名詞の対格)

第一部 定理一七 系二

原文

COROLLARIUM II: Sequitur II. solum Deum esse causam liberam. Deus enim solus ex sola suæ naturæ necessitate existit (per propositionem 11 et corollarium I propositionis 14) et ex sola suæ naturæ necessitate agit (per propositionem præcedentem). Adeoque (per definitionem 7) solus est causa libera. Q.E.D.

自訳

第二に帰結する|〔何が?〕ただ神だけが自由原因であることが。|なぜなら〔enim:根拠(理由)〕神のみが|自らの本性の必然性のみによって|存在し(定理十一および定理十四 系一により)|かつ自らの本性の必然性によってのみ|作用する(先行する定理により)。|こうして〔adeoque:根拠(帰結)〕(定義七により)ただ〔神【1】〕だけが自由原因である。|これが証明されるべきことであった。

語釈

【1】「神(Deus)」が省略されている。

備考 原文①

SCHOLIUM: Alii putant Deum esse causam liberam propterea quod potest ut putant efficere ut ea quæ ex ejus natura sequi diximus hoc est quæ in ejus potestate sunt, non fiant sive ut ab ipso non producantur. Sed hoc idem est ac si dicerent quod Deus potest efficere ut ex natura trianguli non sequatur ejus tres angulos æquales esse duobus rectis sive ut ex data causa non sequatur effectus, quod est absurdum.

備考 自訳①

備考:
他の人々〔反対者〕は思う|〔何を?〕神が自由原因であると|その理由はこうである〔propterea quod:根拠(理由)〕|彼らの考えるところでは〔ut putant【1】:挿入句〕|それらが生じないようにすることができる【2】|〔それらとは何?〕その本性から出てくると我々が言ったもの、すなわちその〔神自らの〕力のうちにあるもの〔が生じないようにすることができる〕|言い換えれば、それ自身〔神〕から生み出されないように〔することができる〕。|しかし〔Sed:転換〕これは同じことである|〔何と?〕彼らがあたかも〔quod以下〕であるかのように言うのと〔同じことである〕【3】|〔内容節を導くquod〕神は出てこないようにすることができる【4】|〔何が?〕三角形の本質から|その〔三角形の〕三つの角が二直角に等しいということが〔出てこないようにすることができる〕|言い換えれば〔sive:解説〕与えられた原因から|結果が出てこないように〔できると彼らが言うのと同じことであり〕|それは背理である【5】。

備考 語釈①

【1】ut = 「〜のように」(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p286 比較文)

【2】(文後半に出てくるnon fiant も合わせて)potest efficere ut ea non fiant で先に訳した。
efficere ut 〜「〜となるようにする」(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p276 ut や nē の導く名詞的目的文)
【3】ac si …「あたかも〜であるかのように」
dicerent  条件文の接続法。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p290 条件文)
【4】(後ろに出てくるnon sequatur も合わせて)Deus potest efficere ut non sequatur で先に訳した。
【5】quodは文全体を先行詞とする関係代名詞。(中山恒夫著「古典ラテン語文典」p330 先行詞)

備考 原文②

Porro infra absque ope hujus propositionis ostendam ad Dei naturam neque intellectum neque voluntatem pertinere. Scio equidem plures esse qui putant se posse demonstrare ad Dei naturam summum intellectum et liberam voluntatem pertinere; nihil enim perfectius cognoscere sese aiunt quod Deo tribuere possunt quam id quod in nobis summa est perfectio.

備考 自訳②

さらにあとで|この定理の助けなしに|私は証明するであろう|神の本性に|知性も意志も属さないということを。|私は確かに知っている|より多くの人々〔plures〕【1】がいることを|〔どんな人々?〕自分自身で証明することができると信じる〔人々がいることを〕|〔その人々は何を証明することができると信じる?〕神の本性に|最高の知性と自由意志が属するということを|なぜなら〔enim:根拠(理由)〕|〔quam以下よりも〕完全なものを自分たちは〔sese【2】〕何も認識していないと|彼らは言う〔aiunt〕|〔何よりも?〕神に帰属させうるものとして|我々のうちで最高の完全性であるものよりも【3】。

備考 語釈②

【1】plures  形容詞の比較級「より多くの」。ここでは名詞化されて「より多くの人々」という意味になる。またここでは対格不定法。

【2】再帰代名詞sēの対格、奪格形にはsēsēもある。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p123 再帰代名詞)
【3】nihil perfectius … quam id…
比較級 + nihil + quam の構文です。
は直訳すると「それより完全なものは何もない」で、「それこそが最も完全である」という最上級に近い意味を表す。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p243 比較級を用いた最上級)

備考 原文③

Porro tametsi Deum actu summe intelligentem concipiant, non tamen credunt eum posse omnia quæ actu intelligit, efficere ut existant nam se eo modo Dei potentiam destruere putant. Si omnia inquiunt quæ in ejus intellectu sunt, creavisset, nihil tum amplius creare potuisset, quod credunt Dei omnipotentiæ repugnare ideoque maluerunt Deum ad omnia indifferentem statuere nec aliud creantem præter id quod absoluta quadam voluntate decrevit creare.

備考 自訳③

さらに〔Porro:付加〕|現実態において〔actu【1】〕最も知的である〔intelligentem 〕神を【2】|彼らは考えるが、|それにもかかわらず〔tametsi〕|しかし〔tamen:転換〕彼らは信じない|それ〔神〕がすべてのものを存在するようにすることができるとは〔信じない〕【3】|現実態において神が理解する〔すべてのものを〕【4】。|というのも〔nam:根拠(理由)〕彼ら自身がそのような仕方で|神の力能を台無しにしてしまうと|考えるからである。|彼らは言う|もしすべてのものを|〔どんな?〕その〔神の〕知性の中にある|〔神が〕創造したとしたら〔creavisset【5】〕|その時それ以上なにも創造することができなかっただろう〔potuisset【6】〕。|そのことは神の全能に矛盾すると|彼らは考える。|そしてそれゆえに〔ideo 根拠(理由)+ -que「そして」〕彼らはむしろ全てのものに対して〔ad omnia〕無差別なものとして神を据えることを好む|そしてそのもの〔id〕の他に別のものを創造しない|〔そのものとは何?〕ある〔quâdam【7】〕絶対的な意志によって創造することを決意したもの〔のほかに〕。|

備考 語釈③

【1】actusの男性単数奪格。ここでは名詞の奪格が副詞的に使われている。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p336 場所の奪格)
【2】intelligoの現在分詞。神〔Deum〕にかかって「最も理解している神=最も知的である神」と訳した。
【3】efficere ut  〜となるようにする
【4】quæ actu intelligit は omniaを先行詞とする関係代名詞。intelligitは三人称単数であり、ここでの主語は彼ら(反対者)ではなく神であることに注意。「現実態において神が理解するすべてのもの」
【5】creōの接続法過去完了。ここでの接続法は反実仮想の用法である。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p291 非現実的条件文)
【6】possumの接続法過去完了。上記に同じ。
【7】quīdamの女性単数奪格。疑問形容詞quīと同変化。ある特定のものを念頭に置きつつ具体的には特定しない。

備考 原文④

Verum ego me satis clare ostendisse puto (vide propositionem 16) a summa Dei potentia sive infinita natura infinita infinitis modis hoc est omnia necessario effluxisse vel semper eadem necessitate sequi eodem modo ac ex natura trianguli ab æterno et in æternum sequitur ejus tres angulos æquari duobus rectis. Quare Dei omnipotentia actu ab æterno fuit et in æternum in eadem actualitate manebit. Et hoc modo Dei omnipotentia longe meo quidem judicio perfectior statuitur. Imo adversarii Dei omnipotentiam (liceat aperte loqui) negare videntur. Coguntur enim fateri Deum infinita creabilia intelligere quæ tamen nunquam creare poterit. Nam alias si scilicet omnia quæ intelligit crearet, suam juxta ipsos exhauriret omnipotentiam et se imperfectum redderet.

備考 自訳④

しかし〔verum:転換〕私は|私が十分明瞭に示した|と考える(定理16を見よ)|〔なにを?〕最高の神の力能から|言い換えれば〔sive:解説〕無限な本性から|無限に多くのものが無限に多くの仕方でもって|すなわちすべてが|必然的に流出したということ〔を十分明瞭に示した〕、|あるいは常に|同じ必然性によって|出てくるということ〔を十分明瞭に示した〕|〔どのように出てくる?〕同じ仕方で〔ac=atque 〜と同様に【1】〕|〔何と?〕三角形の本性から|永遠のものから永遠のものにわたって|その三つの角〔の和〕が二つの直角に等しいことが||出てくるのと〔同じ仕方で〕【2】。|それゆえ〔Quare:根拠(帰結)〕神の全能は|永遠このかた|現実態としてあったのであり、|永遠にわたって同じ現実性にとどまるであろう。|そして〔Et:付加〕このような仕方で|神の全能は|確かに私の見解では|はるかにより完全に確立される。|というかむしろ〔imò=immō:転換〕反対者【3】は神の全能を|(素直に話すことが許されているなら【4】)|否定するように見える【5】。|なぜなら〔enim:根拠(理由)〕彼らは認めることを強いられる|神が無限に多くの創造可能なものを理解していおり|しかし〔神は〕それらを決して創造することができないのだと〔認めることを強いられる〕。|というのも〔Nam:根拠(理由)〕そうではなければ〔alias〕、すなわち〔scilicet:解説〕もし〔神が〕理解するすべてのものを創造するならば、|彼ら〔反対者たち〕によれば|〔神は〕自らの全能を使い切り、|神自身を不完全な状態にするのだから【6】。

備考 語釈④

【1】acは atque の短縮形で、基本的には 「そして」「また」 という接続詞。ただし、比較表現の後に置かれると、
idem ac … 「……と同じ」
eodem modo ac … 「……と同じ仕方で」
という働きをする。
【2】この一文は複雑なので参考に上野訳を載せておく。
「私としてはこれと反対に、神の最高の力能ないし神の無限の本性から無限に多くのものが無限に多くの仕方で ――すなわちすべてが――必然的に流出したということ、あるいは三角形の本性からその三つの角の和が二直角に等しいことが永遠から永遠にわたって出てくるのと同じ仕方で、常に同一の必然性で出てくるということを十分明瞭に示したつもりである(定理十六を見よ)。」
【3】ここで言われる「反対者」とは「神が自由意志によって世界を選択的に創造したと考える神学者たち」を指す。
【4】譲歩を表す接続法。
【5】videor + 不定法  〜のように見える。
【6】反実仮想の接続法。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p291 非現実的条件文)

備考 原文⑤

Ut igitur Deum perfectum statuant, eo rediguntur ut simul statuere debeant ipsum non posse omnia efficere ad quæ ejus potentia se extendit, quo absurdius aut Dei omnipotentiæ magis repugnans non video quid fingi possit. Porro ut de intellectu et voluntate quos Deo communiter tribuimus, hic etiam aliquid dicam, si ad æternam Dei essentiam intellectus scilicet et voluntas pertinent, aliud sane per utrumque hoc attributum intelligendum est quam quod vulgo solent homines. Nam intellectus et voluntas qui Dei essentiam constituerent, a nostro intellectu et voluntate toto cælo differre deberent nec in ulla re præterquam in nomine convenire possent; non aliter scilicet quam inter se conveniunt canis, signum cæleste et canis, animal latrans. Quod sic demonstrabo. Si intellectus ad divinam naturam pertinet, non poterit uti noster intellectus posterior (ut plerisque placet) vel simul natura esse cum rebus intellectis quandoquidem Deus omnibus rebus prior est causalitate (per corollarium I propositionis 16) sed contra veritas et formalis rerum essentia ideo talis est quia talis in Dei intellectu existit objective. Quare Dei intellectus quatenus Dei essentiam constituere concipitur, est revera causa rerum tam earum essentiæ quam earum existentiæ, quod ab iis videtur etiam fuisse animadversum qui Dei intellectum, voluntatem et potentiam unum et idem esse asseruerunt.

備考 自訳⑤

それゆえ彼ら〔反対者たち〕は完全な神を確立するために〔ut【1】〕|そこへ追い込まれる|その結果〔ut【2】〕、同時に彼らは確立せねばならない|〔神〕それ自身がすべてのものを産出することができないことを〔確立しなければならない〕|神の力能が及ぶ〔すべてのものを〕|これより不合理なもの【3】|あるいは神の全能にさらに反するものが|私には思いつかない|なにがでっち上げられることができるだろうか。【4】|次に〔Porro:付加〕知性と意志について|〔どんな?〕私が共通に神に帰する|私はここでまた何かを述べるために|もし永遠なる神の本質に知性と意志が属するなら|この二つの属性それぞれによって【5】|実に別のものとして理解されるべきである|〔何と別のものとして?〕普通人々が〔理解〕するのを常とするものとは。|なぜなら〔Nam:根拠(理由)〕知性と意志は|〔どんな?〕神の本質を規定する|我々の知性と意志から天地ほどに〔toto cælo【6】〕異ならねばならず、|名前を除いて|いかなる点においても一致することができないからである|すなわち〔scilicet:解説〕天の星座の犬と吠える動物の犬が相互に一致するのと同じように。【7】|私はこのことを〔Quod【8】〕このように証明するだろう。|もし知性が神的本性に属するならば、|できないだろう|〔何ができない?〕我々の知性が後なるもの〔であるようにはありえず〕、(たいていの人々にとって好ましいように)|あるいは本性上理解される事物と同時にあること〔もできないだろう〕|というのも〔quandoquidem:根拠(理由)〕神は因果的にすべての事物に先立つからである(定理十六 系一により)。|しかし〔sed:転換〕反対に真理および事物の形相的本質〔formalis rerum essentia〕がそのようなものであるのは|そのようなものとして神の知性のうちに対象的に存在するからである。|それゆえ〔Quare:根拠(帰結)〕神の知性は|神の本質を構成すると考えられる限り|実は事物の存在の原因であると同様にその本質の原因なのである。|そのことは〔quod【9】〕彼らによってもまた気づかれていた〔fuisse animadversum【10】〕と思われる|〔彼らとは?〕神の知性と意志と力能が一つであり、同じものであると主張した人々に〔よっても〕。

備考 語釈⑤

【1】〜するために。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p285 目的文)
【2】その結果として〜(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p292 程度・結果文)
【3】いっそう〜するように(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p286 quō + 比較文)
【4】間接疑問の接続法。(山本太郎著「しっかり学ぶ初級ラテン語」p270 間接疑問文)
【5】per utrumque hoc attributum
【6】toto cælo 慣用表現。「空全体によって」→「まったく」、「天地ほどに」
【7】non aliter~ quam ~  〜と同じように。
【8】Quodは関係代名詞。中性単数対格。先行詞は直前の文全体を指す。
【9】quodは関係代名詞。中性単数主格。先行詞は直前の文全体を指す。
【10】fuisse は sum の不定法完了。animadversum はanimadverto(注意を向ける、気づく)の完了分詞。  

備考 原文⑥

Cum itaque Dei intellectus sit unica rerum causa videlicet (ut ostendimus) tam earum essentiæ quam earum existentiæ, debet ipse necessario ab iisdem differre tam ratione essentiæ quam ratione existentiæ. Nam causatum differt a sua causa præcise in eo quod a causa habet. Exempli gratia homo est causa existentiæ, non vero essentiæ alterius hominis; est enim hæc æterna veritas et ideo secundum essentiam prorsus convenire possunt; in existendo autem differre debent et propterea si unius existentia pereat, non ideo alterius peribit sed si unius essentia destrui posset et fieri falsa, destrueretur etiam alterius essentia. Quapropter res quæ et essentiæ et existentiæ alicujus effectus est causa, a tali effectu differre debet tam ratione essentiæ quam ratione existentiæ. Atqui Dei intellectus est et essentiæ et existentiæ nostri intellectus causa; ergo Dei intellectus quatenus divinam essentiam constituere concipitur, a nostro intellectu tam ratione essentiæ quam ratione existentiæ differt nec in ulla re præterquam in nomine cum eo convenire potest, ut volebamus. Circa voluntatem eodem modo proceditur, ut facile unusquisque videre potest.

備考 自訳⑥

こうして〔itaque:根拠(帰結)〕神の知性は|唯一の事物の原因であるのだから|すなわち〔videlicet:解説〕(私が示したように)その〔事物の〕本質と同様にその存在の〔唯一の原因であるのだから〕【1】|〔神の知性〕それ自身が必然的に事物〔=iisdem〕と異ならねばならない|本質の点と同様に存在の点でも。【2】|なぜなら〔Nam:根拠(理由)〕結果〔causatum【3】〕はそれ自身〔結果自身〕の原因とは異なる【4】からである|まさにその点において|〔結果が〕原因から持っているそのもの〔まさにその点において〕【5】。|例えばひとりの人間は〔もう片方の人間にとっての〕存在の原因であり、|本質の〔原因〕ではない|もう片方の人間〔にとって〕の。|なぜなら〔enim:根拠(理由)〕これは永遠真理であるから。|したがって〔ideo:根拠(帰結)〕〔人間は〕本質の点ではまったく一致することができる。|しかし〔autem:転換〕存在することにおいては異ならねばならない。|それゆえ〔ideo:根拠(帰結)〕もし一人の現実存在が滅びるとしても、|それで〔ideo:根拠(帰結)〕もう一方〔の現実存在〕が滅びるわけではないけれども〔sed〕|もし一人の〔人間の〕本質が滅ぼされ虚偽のものになりうるとしたら、|他方〔もう一方の人間〕の本質も滅ぼされることになる。|こういうわけで〔Quapropter:根拠(帰結)〕事物は|〔どのような?〕ある結果の本質の原因でもあり、存在の原因でもある〔事物は〕|この結果とは異なっていなければならない|〔どのような点で?〕本質という点でも存在という点でも。【6】|しかし〔Atqui:転換〕神の知性は|我々の知性の本質および存在の原因である。|それゆえ〔ergo:根拠(帰結)〕神の知性が|神の本質を構成すると考えられる限りで|我々の知性と|本質という点でも存在という点でも【7】|異なり、|そしていかなる事物においても〔in ulla re〕|名前において以外の|それ〔我々の知性〕と一致することができない|我々が望んでいたように【8】。|意志に関しても|同じ仕方で〔証明を〕進められる|誰もが容易にわかるように。

備考 語釈⑥

【1】tam ~ quam ~  〜と同様に〜
【2】【1】に同じ。
【3】causo(動詞:原因となる)→ causatus(形容詞:原因によって生じた〜)→ causatum(完了分詞:原因によって生じたもの=結果)
【4】differt a  〜と異なる。
【5】読みやすい日本語訳は「なぜなら結果は、〔その結果が〕その原因から持っているものという、まさにその点において、その原因とは異なるからである。」になる。
【6】tam ratione A quam ratione B  Aの点でもBの点でも
【7】【6】に同じ。
【8】読みやすい日本語訳は「そして、我々が望んでいたように、名前において以外のいかなる事物においても、それ〔我々の知性〕と一致することはできない。」になる。

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